人権とは、抽象的で漠然とした個人の「考え方や思い」ではなく、宣言や人権関連条約、規約、法律で規定されているものです。具体的な個別の権利を挙げると、
婚姻の自由、表現の自由、居住移転の自由、集会結社の自由、移動の自由、信教の自由、学問の自由、教育を受ける権利、働く権利、労働基本権、勤労の権利、社会保障を受ける権利、最低限の生活を送る権利、生存権、平等権、社会権、幸福追求権、請願権、裁判を受ける権利、財産権
等々
であり、人権は、こうした権利の集合体をさします。人権を保護し、人権が尊重されるための法律をつくることや、制度を設計することは国の義務であることが原則となっています。
こうした基本原則が、個別の条約にも規定されています。「子どもの権利条約」では、「生きる権利(差別の禁止)」「育つ権利(子どもの最善の利益)」「守られる権利(生命、生存、発達に関する権利)」「参加する権利(子どもの意味ある参加)」の4つの原則で構成されています。その上で、成人に規定されている権利の多くが子どもにもあるとされています。
権利を侵害する社会問題については、部落差別でも、具体的な権利の視点で整理された基準があります。1965年の「同和対策審議会答申(以下「答申」という」です。答申では、「近代社会における部落差別とは、ひとくちにいえば、市民的権利、自由の侵害にほかならない。市民的権利、自由とは、職業選択の自由、教育の機会均等を保障される権利、居住および移転の自由、結婚の自由などであり、これらの権利と自由が同和地区住民にたいしては完全に保障されていないことが差別なのである。これらの市民的権利と自由のうち、職業選択の自由、すなわち就職の機会均等が完全に保障されていないことが特に重大である。」と定義されています。ちなみに、同和地区や被差別部落の出身ではない人たちは「出身者や当事者ではない」ということを理由に、上記の権利が侵害されるような差別は、まずおき得ず、それは努力や実績とは無関係なものです。 |