経済活動がグローバル化し、サプライチェーンが国境をまたぐようになって久しいなか、企業活動は日本に在住する人たちをはじめ、世界中の人たちに影響を与えるようになっています。そうしたなか、事業を進めていくプロセスで、さまざまな人権侵害が発生しており、被害を受けている人たちの人生、命、生活を脅かすような事態となっています。こうした人権侵害を放置することは「責任ある企業」とは決して言えない、そして放置できない社会問題です。「企業の社会的責任」は、グローバル化がますます進む中で、重要度を増してきています。日本においても、最近の例では、ビッグモーターの腐敗や不正、従業員へのハラスメント、旧ジャニーズ事務所の所属タレントへの性暴力とそれを容認してきた構造的問題、宝塚歌劇団における劇団員へのハラスメントや人権侵害とそれらを容認し隠蔽してきた構造的問題などは、まさに「人権軽視」の結果が招いた深刻な問題です。
このように未だ国内外において深刻な人権侵害が発生しており、対策を講じれば未然防止が可能であるにも関わらず、人権への認識の不十分さと脆弱な取組によって問題が複雑化・悪化しています。今、地球規模で「ビジネスと人権」が、これまで以上に重要視されるようになってきており、企業において人権に対する責任ある行動が強く求められるようになっています。
そもそも「ビジネス」とは、狭義の意味では「仕事・職業・事業・商売」を指しますが、広義の意味では、「営利や非営利を問わず、また組織形態を問わず、その事業目的を実現するための活動の総体」と指します。したがって、ビジネスの主体者としては、株式会社などのような営利企業だけでなく、NPOなどの非営利活動法人や住民サービス提供などを行う行政組織等を含んでいます。個人または法人組織などの事業体がそれぞれの事業目的の実現のために、「人・物・金・情報」などの諸資源を活用して行う活動全体を意味しています。 |