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インターネットから見える社会矛盾と人権
〜 インターネットから見える社会矛盾と人権 〜 (第20部)

 日常の業務が多忙なこともあり、更新がなかなかできず、このようなコラムをお読みいただいている声も、県内外各地でいただき、申し訳なく思っています。

 ネットに関わる情勢にも少しずつ各所で動きがあり、国では総務省主体で、グーグル社の地図情報サービスに関しての提言をしていくための研究会が発足したり、各地ではネットモラル・情報教育に関する冊子や資料が次々と作成をされ、ほぼ必修科目のように学校で授業がなされるなど、問題への対応と問題を生じさせない未然防止に向けた取り組みが進められてきています。また適応できる法がないが実質的に被害者が出ている問題については、その規制に向けた議論も、法律家のなかでも進められてきています。

 私自身が受ける相談も、人権という枠におさまらず、オンラインゲーム上で生じた問題、不当・架空請求、現行法では対応できない問題など、多岐にわたるものであり、個人の力ではとても対応できないことが増えている一方で、法律関係者や公的機関、情報工学の専門家やOS関連企業、ときにはハッカーと言えるほどの技術の優れた方などとのつながりもでき、総合的にそれぞれが強い分野で一つの事例をひもとき、対応していくといった連携もできるようになった。

 2009年10月に三重の地にも入ってきたグーグル社のストリートビューに関しては、三重県伊賀市議会で意見書が採択され、国や政府、三重県に向けて、これまでストリートビューに関して生じてきた問題を踏まえた意見が出されました。私が把握できているだけなので正確とは言えませんが、ストリートビューに関する意見書は、最低でも43の地方議会から上がってきています。
 こういった地方議会からの声、そして、そのサービスを通じて生じる問題の事例を積み重ね、その事実とともに国へ提言していくことによって、法の制定に向けて検討しなければならないと立法府に少しでも意識をしてもらうために、事例集約や相談への対応は、非常に重要です。飲酒運転や酒気帯びに関する道路交通法も、以前の罰則では規制できていないという事故の積み重ねが立法事実となり、厳罰化となりました。「個人情報保護法」も法制定前では現行法では対応できなかった事実と、法がなければ対応できない課題が現れてきた結果だと思います。

 少し話しは変わりますが、18部で掲載させていただいた内容について、もう少し私の見解を書いておきたいと思います。

最近では、高等学校や大学を卒業したであろう20代や30代ではないかと思われる酷い書き込みに出会います。実際に書き込みや議論の対象が、20代や30代、ときには40代がターゲットになっています。書き込みのなかに、そのような情報も出てきています。

 本コラムは「インターネット」を通じて生じている問題を題材として取り上げてはいますが、単に人権というものだけではなく、総合的な視点のなかで、私自身は、保育や学校教育について、次のように考えています。

 「学校でどのような教師と出会い、その学校や教員の教育活動のなかで、どのような人生モデル・職業モデルと出会い、どのような友と出会い、どのような体験をしたのかという経験・体験は、社会に出たときに端的に成果と課題となって表れる」

 例えば、携帯電話を通じて生じてくる問題。他者を非難したり中傷する子ども。その行為そのものは問題ですが、その子自身だけの問題ではありません。携帯電話やインターネットを利用している人のすべてが、それを手にした瞬間に他者を中傷するはずはありません。深めていくべきは、「なぜ、そのような行為をするまでに至ったのか」の原因・背景をつきとめる作業ができないと問題は再発し続けます。無差別大量殺人事件もその典型だと思っています。

 私が特に着目している、私と同年代の方かと思われる20代の他者を批難する書き込みを見て、このような視点のなかで「どのような人と出会い、どのような教育を受け、どのような環境のもとで、どのような経験・体験してきたのだろうか」と考えています。きっと学力も高く、経済的にはそんなに不自由していないと思います。しかし、壁にぶつかったときに乗り越えられる力が身につくような将来的な視点にたった学校教育が展開されていなかったことで、支えてくれる仲間がおらず、相談できる相手もいないことも原因の一部となって挫折してしまったり、ときには、そこで生じたストレスやイライラしたものを、日常的にはそんなに「悪いやつらだ」とは思っていないものの、他者を差別することによって発散したりしてしまうのではないかとも考えています。当然、すべてにはてはまることではありません。
学力があり、経済力もある家庭に生まれ育ってはいますが、例えば、インターネットを使える環境にあって、学力や経済力があるからこそ得られる情報を、自分の今の生活や将来の生活を高めていくために使わない、使おうとされない、そんなふうにも捉えています。

 私の母校で、小学校区すべての子どもたちに学力・人間力・将来展望・自尊感情を身につける取り組みを連携・連帯している小学校の教育目標は、身近な大人が社会の情勢を的確に捉えた上で、どのような子どもを育て、どのような成人、保護者、親として、ともに育まれていくべきなのかを3つの柱でまとめられています。

@自他のくらしをみつめ自分をとりまく人々の願いを受け止め、生活を高めていこうとする力の確立

A教科の学力を高め、情報を正しく活用し、確かな判断力のもとで問題を解決していく力の確立

B多様な人生モデル・職業モデルとの出会い体験活動を通して、自分なりの生活や将来を思い描く力の確立

 低学力の問題、生活困窮の問題、それぞれの問題に対抗していくために、保育や教育の問題は多大な影響を及ぼします。放置しておけば、それが子や孫へ遺伝されてしまいます。差別意識や偏見も放置されてきたからこそ長年続いていると思いますし、それは家庭教育活動も同じです。もちろん公的な支援は、厳しい人々に応じて必要ですが、今の子どもたちにどのような力を身につけ、どのような大人へと育まれていくことが、これらの問題を克服できるのか、一人ひとりの子どもたちの将来のビジョンを子どもに関わる大人がどれだけ描けるか、人権問題解決にとっても極めて重要だと思っています。

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