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インターネットから見える社会矛盾と人権
〜 インターネットから見える社会矛盾と人権 〜 (第22部)

 昨今、インターネットアプリケーション「LINE」を通じたトラブルが全国各地で発生し、児童がが自死に至る痛ましい事件が報道されています。三重県内においても、LINEを通じたトラブルは数年前から小中高校より報告されており、深刻な状況に陥っている学校やクラス、子どもたちが出てきています。おとなが非常にストレスを感じやすい社会では、その影響は子どもたちに真っ先に酷く影響を及ぼすと言われています。講演で県内外の学校にお招きいただきますが、学校に通う児童・生徒数は減ってきているのに、生活面で課題を抱える児童・生徒、支援が必要な児童・生徒は増加傾向にあるように感じてなりません。

 新しいサービスが導入され普及しはじめると必ずと言っていいほど、いじめ問題などに悪用されてきました。当研究所が子どもたちを取り巻くインターネットを通じた問題に取り組みはじめたのは、携帯電話端末専用掲示板からでした。パソコンでは閲覧・利用できない掲示板のなかで、特定個人が誹謗中傷され、不登校や保健室登校に追い込まれる児童生徒の存在がクローズアップされはじめました。携帯電話端末専用掲示板の次に流行しはじめたのが「ホムペ」と呼ばれるものです。「ホームページ」の略語で、機能は主に「プロフィール、掲示板、画像、ブログ」が一体となり、友人・知人が開設しているホムペやブログなどへのリンクも導入されていました。そしてホムペのなかで、友人・知人の誹謗中傷がはじまりました。続いて、モバゲー、グリー、そしてアメーバが登場し、そのなかでも同じような問題が起きていきました。出会い系サイトから、非出会い系サイトのなかでの犯罪なども、同じような経路をたどっているように思います。そして、LINEの登場です。

 主にLINEを通じて行われるいじめ問題や特徴は、

1.メール(グループのなかでも)やタイムラインでの特定個人に対する誹謗中傷、盗撮や強制的に撮影した画像の掲載、デマや噂の助長

2.グループ内において、メンバー1人に対する直接的な誹謗中傷や仲間はずし(グループからの強制退会)

3.既存グループメンバーが、グループに新規加入したいと要望している児童・生徒を誘い、新規メンバーがグループに入会した瞬間、既存グループのメンバーが一斉に退会し、別のグループを立ち上げるという仲間はずしや嫌がらせ

4.既読がつき、相手は自身が送ったメールを読んだにも関わらず、返事がないことへのイラつきや不安感が招く、人間関係の断絶やいじめへの発展

5.相手に既読をつけ、わざと返事をしないという、嫌がらせやいじめ(集団で行われる場合もある)

6.攻撃したい相手にLINEスタンプを単数または複数名が何千・何万回と送信することで、受信者のスマホを機能不全にする「通称 スタンプ爆撃」

おとなが把握しきれていないだけで上記、6点以外にもさまざまな問題が発生していることでしょう。今では小学校の中学年から問題が発生し、ときには保護者間でも同様の問題が生じています。

他にも、「リベンジポルノ」と言われる、交際時に男性が女性を撮影したり、女性にメールなどで送らせた裸画像を、女性側から別れ話が切り出された際に「写真をばらまくぞ」というように脅しに使うといった問題も中高生の間で発生しています。脅された被害者はすぐに警察に駆け込みたいところですが、警察の捜査で相手が憤り、脅しだけでなく本当に画像を流出させられたら取り返しがつかなくなることを不安に思い、警察にすら行けない被害者も出てきています。実際に流出させられた被害者のなかには社会復帰できないほどのダメージを受けた事例もあります。一度インターネットに流された情報は収集不可能になります。

 現在、LINEを通じて発生している問題や他の問題は、以前からありました。いわゆる加害者は、その時代その時代に流行しているサービスを使ってトラブルを発生させています。サービスは新しくなるにつれて、さまざまな機能が導入され、その機能を巧みに使い、相手を攻撃したり貶めるということが繰り返されてきています。子どもに関わる者として忘れてはいけないのは、事の本質は変わっていない、変わったのはサービスであるということです。この観点がないと、子どもたちが引き起こす問題に振りまわされてしまいます。かつて、携帯電話専用端末掲示板は多くのおとなが知りませんでした。私もその1人です。どのような機能があるのか、どのように使うのか、何が行われているのか、何ができるのかを知るために研修や講演会がもたれていきました。続いて、モバゲー、グリー、アメーバのなかで問題が発生すると、「モバゲーとは何か」から研修や講演を開催するようになりました。今日では「LINE」です。使ったことがないからわからない、どのような問題があるのか自分たち教職員や保護者が知らない、対処方法がわからないということで、講演会や研修会が開催されるようになっていきました。これそのものを批判するつもりはありませんが、これでは、子どもたちが引き起こす問題への対応が後手になってしまいます。問題が起きれば、もちろん対処しなければなりませんが、同時に、なぜ問題が起きたのかを考えなければなりません。

 おとなも、子どもたちにも考えてもらいたいこととして、いじめ問題に限らず、
1.なぜ、インターネットに依存してしまうのか
2.なぜ、スマホが手放せないのか
3.なぜ、人を誹謗中傷するのか、してしまうのか
4.なぜ、既読スルー(無視)が人間関係の悪化という影響をおよぼしてしまうのか
5.自分と家族や友人との関係においてスマホはどのような役割(プラス面・マイナス面)を果たしているのか

私たちは社会問題を「根っこ」から解決していこうという視点をもたなければなりません。問題という「現実」には、それが発生するに至った「原因や背景」が必ず存在しています。物事の背景にあるもの、その裏側にあるものまでしっかり見つめることからはじめ、解決に向けた取組をスタートさせようということです。

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