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インターネットから見える社会矛盾と人権
〜 インターネットから見える社会矛盾と人権 〜 (第24部)

 前回の第23部で紹介をした県内某市内の全中学生(2,445人)を対象とした調査では、項目間のクロス集計も行いました。どのような状態にある生徒が、ネット依存や加害者になっているのか、その一端を探索しようと行いました。

 総数で最も割合が高かったのは「1時間〜2時間より少ない」で23.9%、2番目に高かったのは「2時間〜3時間より少ない」で19.0%、3番目は「4時間以上」「1時間より少ない」で16.7%、次いで「3時間〜4時間より少ない」で15.5%、「全くしない」が7.4%となっています。「1時間より少ない」「全くしない」の2つをあわせても24.1%と3割に満たず、多くの生徒が1日のなかでインターネットを利用する時間は長いといえます。

問5 あなたは1日どれくらいの時間、インターネットやアプリケーションを利用していますか。

 性別で見ると、インターネットの利用状況は「男性」よりも「女性」のほうが高く、「4時間以上」では「男性」が14.4%に対し、「女性」は19.1%と2割近い結果となっています。「3時間〜4時間より少ない」「2時間〜3時間より少ない」でも「女性」は「男性」よりインターネットの利用時間が長くなっています。

 学年別で見ると、「4時間以上」「3時間〜4時間より少ない」では「中2」が他の学年よりも高く、「4時間以上」では20.7%と2割に達しています。ネット依存による健康不安や生活習慣の乱れ、学力低下等が社会問題となっているなかで、伊賀市内の中学生のネット依存度は決して低くありません。特に注意を払いたいのは「女性」であり、「中2」の生徒です。

表1 「1日のインターネット利用時間」と自尊感情・自己肯定感等とのクロス集計

 インターネットへの依存傾向が高い生徒は、どのような状態にあるのかについて、まず「問5 1日のインターネット利用時間」と「問14 自分にはよいところがある」とをクロス集計しました。「自分にはよいところがある」で「ない」と回答した生徒がインターネットを「4時間以上」利用している割合が最も高く39.8%と4割に達しています。一方、「自分にはよいところがある」で「よくある」と回答した生徒は「1時間〜2時間より少ない」「1時間より少ない」が最も割合が高くなっています。自己を肯定的に捉えられる意識の状態とインターネット利用時間との相関関係があることがわかり、自己を否定的に捉える生徒のネット利用時間は長くなっています。

 次に「問15 信頼できる人が周りにいる」とクロス集計しました。「信頼できる人が周りにいる」で「ない」と回答した生徒がインターネットを「4時間以上」利用している割合が最も高く32.5%と3割をこえています。自分の悩みなどを打ち明けられる人が身近にいないことで、必然的にインターネットでそうした関係性を求めにいっていることがうかがえます。

 次に、「問16 自分がイヤになること」とクロス集計しました。「自分がイヤになること」で「よくある」と回答した生徒の「4時間以上」が29.6%と3割におよんでいます。一方、「自分がイヤになること」が「ない」と回答した生徒の「1時間〜2時間より少ない」「1時間より少ない」が最も割合が高くなっています。自己を否定的に捉えられる意識の状態とインターネット利用時間との相関関係があることがわかり、自己を否定的に捉える生徒のネット利用時間は長くなっています。

 次に「問17 死にたいと考えたこと」とクロス集計しました。「死にたいと考えたこと」で「よくある」と回答した生徒の「4時間以上」が最も割合が高く31.0%と3割をこえています。一方、「死にたいと考えたこと」が「ない」と回答した生徒の「1時間〜2時間より少ない」「1時間より少ない」が最も割合が高くなっています。「死にたい」と考えたことがある状態とインターネット利用時間との相関関係があることがわかり、「死にたい」と考えたことが「ある」生徒のネット利用時間は長くなっています。

 次に「問18 何もやる気がおきないこと」とクロス集計しました。「何もやる気がおきないこと」で「よくある」と回答した生徒の「4時間以上」の割合が最も高く30.1%と3割に達しています。無気力な状態にある生徒のインターネット利用時間が長くなっていることがわかります。

 次に「問19 自信がないので周りにあわせること」とクロス集計しました。「自信がないので周りにあわせる」で「よくある」と回答した生徒の「4時間以上」が最も割合が高く23.2%となっています。一方、「自信がないので周りにあわせること」で「ない」と回答した生徒の「1時間〜2時間より少ない」「1時間より少ない」が最も割合が高くなっています。自信の有無とインターネット利用時間との相関関係が見られ、自信を身につけていない生徒の利用時間が長くなっています。

 次に「楽しいと感じること」とクロス集計しました。「楽しいと感じること」で「ない」と回答した生徒の「4時間以上」が最も割合が高く41.7%と4割をこえています。「楽しいと感じること」が少ないがゆえに、インターネットのサービスを利用することが必然的に長くなっていることがうかがえます。

 次に「問21 周りの役に立っている」とクロス集計しました。「周りの人の役に立っている」で「ない」と回答した生徒の「4時間以上」が最も割合が高く37.3%と4割近くに達しています。一方、「周りの人の役に立っている」で「よくある」と回答した生徒の「1時間〜2時間より少ない」が最も割合が高く29.0%と3割近くになっています。「周りの人の役に立っている」ことへの実感が「ない」生徒のインターネット利用時間が長くなっていることがわかります。

 次に「問22 コンプレックスの有無」とクロス集計しました。「コンプレックス」が「ある」と回答した生徒の「4時間以上」が最も割合が高く25.3%となっています。一方、「コンプレックス」が「ない」と回答した生徒の「1時間〜2時間より少ない」「1時間より少ない」が最も割合が高くなっています。コンプレックスのある傾向が強いほど、インターネット利用時間が長くなっています。

 こうしてみると、生徒の自尊感情、自己肯定感、自己効力感といった精神的・心理的な状態によって、インターネットの利用時間に大きな差が見られることがわかりました。自尊心などが低くなっていくとインターネットを利用する時間が長くなり、そのことによって依存度を高めてしまうという悪循環に陥ってしまう可能性があることを示唆していると言えます。

問8 あなたは、インターネットやLINEで他人に対して、悪口や陰口、うわさ話を流すなどの人を傷つけることや仲間はずしをしたことがありますか。

 総数では、「ある」が5.2%、「ない」が92.7%となっています。問7での被害経験が「ある」との回答は3.4%であったため、若干ですが加害経験者が被害経験者を上回っています。

 性別で見ると、「男性」の「ある」は4.6%、「女性」の「ある」は5.9%と、「女性」のほうが若干高くなっています。

 学年別で見ると、「中1」の「ある」は4.5%、「中2」の「ある」は7.1%、「中3」の「ある」は4.0%と、「中2」が他の学年と比べて高くなっていることがわかります。

表2 「インターネットを使った加害経験」と自尊感情・自己肯定感等とのクロス集計

 「問8 インターネットを使った加害経験」について、どのような状態にある生徒が加害行為に至ったのかを見るため、自尊感情等に関わる項目とクロス集計をしました。

 まず、「問14 自分にはよいところがある」で「あまりない」「ない」と回答した生徒の加害経験が「ある」とした割合が最も高く9.3〜9.8%におよんでいます。一方、「よくある」「ある」とした生徒の「ない」と回答した割合は93〜95%と割合が最も高くなっていました。自己を肯定的に見ることができない生徒が加害行為に至っていることが考えられます。

 次に、「問15 信頼できる人が周りにいる」とクロス集計しました。「信頼できる人が周りにいる」で「ない」と回答した生徒の加害経験が「ある」とした割合が最も高く17.5%におよんでいます。一方、「よくある」「ある」と回答した生徒の加害経験が「ない」との回答の割合が最も高くなっています。信頼関係のない状態が加害行為に至っている傾向が高いといえます。

 次に、「問16 自分がイヤになる」とクロス集計しました。「自分がイヤになること」が「よくある」と回答した生徒の加害経験が「ある」とした割合が最も高く13.6%になっています。一方、「ない」「あまりない」と回答した生徒は加害経験が「ない」とした割合が最も高くなっています。自己を否定的に見る傾向が強いほど加害行為に至っている傾向も強くなっているといえます。

 次に、「問17 死にたいと考えたこと」とクロス集計しました。「死にたいと考えたこと」で「よくある」と回答した生徒の加害経験が「ある」とした割合が最も高く16.1%となっています。一方、「ない」「あまりない」と回答した生徒は加害経験が「ない」とした割合が最も高くなっています。死にたいと考えたことが「ある」傾向が強いほど、加害行為に至っている傾向も強いといえます。

 次に、「問18 何もやる気がおきない」とクロス集計しました。「何もやる気がおきない」で「よくある」と回答した生徒の加害経験が「ある」とした割合が最も高く9.6%となっています。

 次に、「問19 自信がないので周りにあわせる」とクロス集計しました。「自信がないので周りにあわせる」で「よくある」と回答した生徒の加害経験が「ある」とした割合が最も高く9.6%となっています。
 次に、「問20 楽しいと感じること」とクロス集計しました。「楽しいと感じること」で「ない」と回答した生徒の加害経験が「ある」とした割合が最も高く16.7%となっています。一方、「よくある」「ときどきある」とした生徒の加害経験が「ない」とした割合が高くなっています。楽しいという実感が弱いほど、加害行為に至る傾向が強いといえます。

 次に、「問21 周りの人の役に立っている」とクロス集計しました。「周りの人の役に立っている」で「ない」と回答した生徒の加害経験が「ある」とした割合が最も高く11.9%となっています。一方、「よくある」「ときどきある」とした生徒の加害経験が「ない」とした割合が高くなっています。周りの人の役に立っているという実感が弱いほど、加害行為に至る傾向が強くなっているといえます。

 次に、「問22 コンプレックス」とクロス集計しました。「コンプレックス」で「ある」と回答した生徒の加害経験が「ある」とした割合が最も高く7.7%となっています。一方、「よくある」「ときどきある」とした生徒の加害経験が「ない」とした割合が高くなっています。コンプレックスのある傾向が強いほど、加害行為に至る傾向が強くなっているといえます。

 こうしたことから、インターネットを使って他人を誹謗中傷したり、仲間はずしをするなどの加害行為に至る生徒の多くは、自尊感情、自己肯定感、自己効力感が低い傾向が見られます。インターネットやLINEを通じたトラブルが生じた際、そうしたサービスそのものへの知識や理解は必要ですが、それよりも、自尊心などが育まれていないことが問題を呼び起こす要因となっていることに着目し、問題の根本的解決は1人ひとりの生徒に、人間形成で重要な自尊感情や自己肯定感、自己効力感をいかに育むかに重点を置き、取り組まれなければなりません。

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