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インターネットから見える社会矛盾と人権
〜 インターネットから見える社会矛盾と人権 〜(第10部)

 第6部で緊急的にグーグル社のストリートビューに関する見解を紹介させていただいた。以後、マスコミ関係者をはじめ、さまざまな方々から情報提供いただき、ストリートビューに関する見解を紹介してもらえるなど、今や世界的に良い意味でも悪い意味でも注目を集めるものとなった。

 さらに、11月には「グーグルマップ」上において、学校の家庭訪問先の児童名と住所、行政機関の極秘内部資料、患者の自宅一覧表、企業の内部情報である顧客名簿や住所等々が漏洩してしまうという問題が生じ、文部科学省も全国の都道府県教委に通達を出し、注意喚起を促すほどにもなった。
 文科省が通達を出すまでに情報を得ていたこともあり、早期に県教委へ連絡をするなど、県内で上記のような問題が生じないよう注意喚起をしていただいた。本来、この「毎マップ」作成については、「作成者自身と作成者が許可した人のみが閲覧できる地図情報」と銘打っていたのだが、今回のようにネット上に公開されてしまったということである。通常であれば、ネット上に個人情報を作成していくことに躊躇しなければならないとこであるが、個人情報保護法の本来の意味が定着し、今回のようにネット上で個人情報を管理しようとする行為そのものが自粛されなければならない。

今一度、第6部では紹介しなかったストリートビューの問題点を整理してみたい。

第1に、個人の自己情報が無許可で他者(グーグル社)にコントロールされてしまっていることである。これまで、戸籍不正入手事件などにおいて、8士業の資格を持つ方が、登記や裁判などと偽り戸籍謄本や住民票の写しを本人の許可がなくても取得でき、身元調査をはじめ、個人情報が売買されている事件が何度か取り上げられてきた。
それぞれの個人が自身に関する個人情報をコントロールできないという問題点について、少しずつではあるが改善されてきているが、今回のストリートビューに関しては、プライバシー権や肖像権等に関わって、それぞれが持つ自己情報をコントロールできず、無許可に世界中に公開されているという点に問題がある。

 第2に、プライバシー権や肖像権を侵害された個人が、そのことを自覚できないことにある。基本的にパソコンやインターネット接続機器があるなかで、このストリートビューの存在を知り、ストリートビューを開いて自分の自宅周辺の様子や、撮影時に自身が徒歩などをしていた場所を検索する、以上の取り組みをした上で、自己情報がどのような扱いをされているのかを自覚することができる。そして、そこに権利侵害があると感じたときに、削除依頼をして、グーグル社の判断を仰ぎ、削除に至るというものである。
 つまり、[1]パソコンがあるのかないのか、[2]パソコンはインターネットに接続をしているのか否か、[3]ストリートビューを知っているのか否か、[4]ストリートビューを使用できるのか否か、[5]削除依頼を出す方法を理解できるか否か、[6]自身が撮影されていることを発見してくれる友人がおり、そのことを本人に連絡などをしてくれる関係があるか否か、これらの条件が揃わないと、被害なき被害者として、自己情報が世界的に閲覧できる状態のまま放置されていくことになる。人物の顔や車のナンバー、自宅の表札には自動的にモザイクを入れているとグーグル社は言うが、真っ赤な嘘であり、私なりに国内を確認してみたが、公開されているものはいくつか発見できた。

 マイマップは作成者及び作成者が許可したもののみ閲覧できる、ストリートビューで撮影された人物の顔、車のナンバー、表札は自動的にモザイクがかかるというグーグル社が発信してきた情報の術中にはまり、個人情報が漏洩してしまった人がおられ、またプライバシー権や肖像権を侵害されている人々が実際にいることを考えれば、大丈夫だと銘打ってきたグーグル社は極めて悪質と言える。ましてや、これも以前に紹介してきたが、アメリカで起きたプライバシー侵害に関する民事訴訟の被告であるグーグル社は、「この世にプライバシーなど存在しない」など勝手な考えにより、企業としてあるまじき見解を述べてきた。個人的にグーグルサイトのユーザーとしても非常に残念であった。

第3に、以前も紹介してきたが、すでに大型掲示板をはじめ、さまざまなサイト上で被差別部落が撮影された箇所及びURLを抜粋し、差別的書き込みや住所をあわせてネット上に公開し、差別を助長・扇動していることにある。公開されることに問題があるとは言えないが、特定の地域を抜粋し、差別を助長・扇動していることに問題があると言える。以前からも紹介してきたが、そんなことに時間を費やす自尊感情が低下してしまった方がいる以上、まだまだ課題は多い。そして、人々のプライバシー権や肖像権を企業が無許可でネット上に公開をして侵害している行為に対し、「現社会にプライバシーなど存在しない」と述べている以上、これらの人権問題に対するグーグル社の取り組みは今すぐには期待できない。

 まだまだ課題はあるが、端的に紹介してもこれだけ問題がある。こういったことが世界な問題として、グーグル社への信頼が薄れ、批難さえ起きてきている。現段階では営利目的としてストリートビューを公開していないとグーグル社が述べていることで、個人的にはなぜ、自社の信頼を落とすようなことをしたのかが理解に苦しむところである。

 これらの問題に対し、全国の地方議会や国政の場での人権やプライバシーを守るための取り組みが推進され、意見書などもグーグル社に対して提出されてきている。つまり、市民の不安や怒りの声を地元の自治体窓口に届けることが重要だと言える。地道な取り組みによって今回の問題も解消へ向かうだろう。個人が動き、組織を動かす、今後、行財政がますます厳しくなってくるなかでの個人や市民活動の活性化は必要不可欠である。

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