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インターネットから見える社会矛盾と人権
〜 インターネットから見える社会矛盾と人権 〜(第6部)

 2008年8月5日から、Googleは「ストリートビュー」という地図上において、その地域の様子を画像で、四方八方を閲覧することができ、行ったことのない場所も、散歩をしているような感覚になれるものを世界的に導入しはじめた。  私も8月6日から使用してみたのだが、三重県にいながらにして、アメリカのサンフランシスコの町並みをパソコン画面で散歩することができた。

 公道(都道、道道、府道、県道、市道、町道、村道)からの撮影であれば、例え、私の住まいが撮影されても、現行法では肖像権の侵害やプライバシー侵害にはならないようだ。  8月現在で、国内では12都市において、それがネット上で表示されるようになった。画像には、人、車、家、店などが写っている。  インターネット掲示板では、すでに差別や人権侵害に悪用されているケースが、導入された8月5日からはじまっている。

 例えば、公道沿いにある被差別部落などを、掲示板上でその地域を示し、画像を添付されれば、まるでその被差別部落を散歩しているかのように、家並みや町並みを確認し閲覧することができる。  公開されることが問題ではなく、そこに差別的な意図が入っていたり、人権を侵害するような扱われ方をしていることが問題である。某所では、小学生と思われる子どもがその写真上に掲載され、掲示板上では「在日の女の子」と書き込みもされている。

 今後、部落地名総鑑的な悪用をされたり、身元調査に使用される可能性は高い。

 某大学の教授が8月に研究所に来ていただいたとき、私が「先生の家の付近、こんな感じで表示されるようになってきましたよ」というと、教授は驚かれ、「あ、この寿司屋を入っていって、突き当たりを右に曲がったら、俺の家や」と言われた。

 世界規模でこのようなことが行われ、プライバシーや肖像権が侵害され、現行法では対応できない差別的悪用によって、さらなる権利侵害が生み出されてしまうだろう。  確かに便利で楽しいものであるが、社会的弱者や被差別の対象にストレスの発散をしてきた人物にとって、さらに差別をするための武器を企業が与えたといっても過言ではない。

 技術的に人物そのものを画面上から消すこともできるのに技術的処理をしていない、住宅の開口部から部屋の中が見られてしまうことについても、技術的な処理を怠っていることが、結局はGoogleにとっては信頼も含めて損害になってしまう。

 アメリカで起きたプライバシー侵害の民事訴訟の被告側であるGoogleは原告に対し、「現代社会にプライバシーなど存在しない」と発言していることから、問題意識の低さから見ても簡単には行かない可能性が高いが、できることからはじめていかなければ、放置しておけば問題は必ず悪化する。

 よって以下の内容を関連企業に提案していきたい。

 1点目に専用車両において撮影されている公道上の人物・車・住宅の開口部から見える市民の部屋等に関し、貴社の撮影車そのものが技術的処理において画面上からは見られないようになっていることから、画像処理される際には、「人物・車・住宅の開口部内に関しては、モザイク処理ではなく貴社の撮影車と同様に、消去処理」を提案していく。  本件に関して、人格権を侵害する写真を公開されていたりもしている。迅速に対応できるしくみを組まれているが、高校生が路上でキスをする写真などはすでに、いわゆる「ウェブ魚拓」をとられ、ストリートビュー上で削除されたとしても、そのデータが今後、電子空間のさまざまな場で出回る可能性は、これまでネット上で生じてきた問題を見れば一目瞭然である。 より多くの方々に、関連企業の主旨にあったかたちをもってストリートビューを利用していただくため、また企業へのさらなる信頼向上等についても、以上の取り組みをお願いしたい旨のこと。

 2点目は、「画像や画像URLのリンク、貼り付け先からの閲覧規制、コピー並びに印刷の規制」についてである。ストリートビューが導入されたことを2008年8月6日に確認した当所においては、これが部落差別などの差別を助長するものに悪用される可能性をすでに感じていた。予想通り、大型掲示板上では、差別を助長・扇動するものとして悪用されている。

 現行法ではまだまだ防止・規制できない状況のなかで、関連企業における「画像や画像URLのリンク及び貼り付け先からの閲覧規制、コピー並びに印刷の規制」について、この日本社会における差別の現実やそれによる心理的被害の防止のためにも、そしてストリートビューが本来の主旨にあった利用をなされていくよう、検討してもらう。  大まかには、プライバシー侵害・肖像権侵害・差別という悪用のほか、空き巣などを考えている人物が、行為前に周辺地域の様子などを事前下見しなくてもネット上で公道上は下見が可能なったことなども今後、問題として浮上してくる可能性がある。

 利便性の追求をはじめ、科学技術の進歩とともに、これらのような問題が出てくる度に、対応や相談、規制や防止のための調査・実態把握・研究・啓発・教育といった取り組みが必要になってくると思うと、もぐらたたき的な感じがしてならない。  危機管理意識を高め、生じてくるだろう問題を事前に考慮した後、導入していく慎重な取り組みが求められている。

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