〜 インターネットから見える社会矛盾と人権 〜(第13部)
インターネット上の問題と関わり、2009年1月で4年が経過しました。個人的にボランティアで取り組んでいる内容と、業務として取り組んでいる内容が混同するなか、当研究所のホームページでも12部にわたってさまざまな内容をご紹介させていただいております。北は秋田から南は鹿児島の方々もお読みいただき、さらにはご活用いただいていることをお聞きし、インターネットの影響力のすごさを改めて実感しました。
取り組む内容が年々広がりを見せているなかで、「援助交際」に関する書き込みなどにも取り組みはじめています。最近、特に、私が把握できている掲示板などのなかに目立つようになり、露骨なものから、造語を用いて誘いうものなど、匿名の世界でありますので、表面的な書き込みからは属性がわかりませんので、基本的には警察へ連絡をしています。
出会い系サイトには電話会社を中心としてフィルターをかけ、これまで接続できたサイトを利用できなくなってきたこともあるのかもしれませんが、優良サイトとされる「フィルターがかかっていない掲示板」などで、「フィルターのかからない造語」を用いての「援助交際」に関する書き込みが目立ちはじめています。こうなると「おとなVS未成年」の「もぐらたたき」の開始です。
私が確認した事例、また警視庁のDVDなどで認識できた援助交際に関わる造語は、
○ホ別3 → ホテル代別で3万円
○WU吉 → Wは2、U吉は福沢諭吉 = 2万円
○差保 → サポート(子どもたちは援助という意味で使ったりする)
○プチ助 → 援助交際
これら以外にも、携帯電話のボタンを押す回数など、おとなの監視やフィルターをかいくぐるために、巧みに言葉をつくりあげ、問題を引き起こしています。これらの造語は、ニュースでも取り上げられたので、子どもたちは新たな造語をつくり同じことをしていくでしょう。
問題を「改善」していくことを目的として、フィルタリングの導入は大切だと思います。ネットいじめと呼ばれるものも、インターネットに表面化することについては防止可能になるでしょう。しかし、以前、問題のとらえ方をご紹介しましたが、この「フィルタリング」に固執される方もおられます。実際に、ネットいじめの加害者になってしまった子どもから、携帯電話そのものを取り上げた方もおられます。この子どもは、これで「ネットいじめ」はできなくなりました。
しかし、「いじめ」をやめたかというと、そうではありません。「なぜ、いじめをするのか」に迫れず、手段を取り上げたに過ぎませんので、次の手段を考え、それを実行します。相手をたたく、無視をする、大切にしている物を隠す・壊す・とる、机のなかに土や粘土を入れる、強制的に罰ゲームを実行させる、不幸の手紙を書く、あだ名をつけてバカにする、いじめの方法は考えればいくらでも出てきます。
当然、「差別」も同じです。差別落書きに関して、「マジックやペンを持って、壁や塀、トイレに落書きをするか」、「自分の部屋でインターネットに接続し、キーボードで差別的な内容を打ち込むか」、その落書き方法を選択すれば、今の時代では、ほとんどの人がインターネットを使うでしょう。現実世界では器物損壊罪が適用されることもあるからです。それが一つの躊躇を生んでいることも確かです。やはり法律は必要不可欠ですが、それでも「解決」はできないと思います。
ネットいじめが注目されすぎ、現実的ないじめに対して軽率な見方や感覚を持ってしまっている方もおられます。問題発生原因の探求が大切であることは第9部も掲載させていただきました。「ネットいじめ」を引き起こすまでの原因は、インターネットや携帯電話ではないということです。場所や時間を選ばず、匿名で書き込みができるという点で、現象面では携帯電話やインターネットが大きく作用していますが、あくまで手段であり、いじめの手法として、携帯電話やインターネットを悪用してしまうということです。
「携帯電話を持たさない」、「インターネットを使わさない」手段をおとなが選ぶのは、最も楽です。物理的なものを取り上げるだけです。後は高圧的に「だめ」を徹底しておけば、インターネットを使用できないので、「ネットいじめ」はなくなるでしょう。実際に取り組みが可能であればの話です。
しかし、これまでの取り組みや相談のなかで、「いじめの本質が十数年前と変わっていない」と述べる教員さんがいたり、臨床心理士さんがいたり、実際に自分の体験と照らし合わせても、全く同じといっていいほど、いじめの構造や発生要因が似ていたりして、過去の「いじめ」の実態から何も変わっていないのではないかと感じる情報がどんどん入ってきます。
フィルタリングは大切です。子どもたちに対し、有害サイトと呼ばれるサイトにアクセスできなくする、「自由に圏外以外の場所を選ばずネットに接続できる環境下」では、有効な手段だと思います。
しかし、フィルタリングは「改善」できても、「解決」はできないと私は感じています。
後述は、「発生原因を的確に捉え、どこに課題意識を置くか」ということであり、これまでご紹介させていただいた内容と重複しますので、以上とさせていただきます。