〜 インターネットから見える社会矛盾と人権 〜(第12部)
第10部でご紹介させていただいた内容のなかに、ストリートビューに関し、
[1]パソコンがあるのかないのか
[2]パソコンはインターネットに接続をしているのか否か
[3]ストリートビューを知っているのか否か
[4]ストリートビューを使用できるのか否か
[5]削除依頼を出す方法を理解できるか否か
[6]自身が撮影されていることを発見してくれる友人がおり、そのことを本人に連絡などをしてくれる関係があるか否か
以上の内容に関して、差別的書き込みや人権侵害の書き込み等々とは別に、取り組むべき重要な問題であると考えています。このような問題を総称してデジタルディバイド(情報通信手段に対するアクセス機会及び情報通信技術を習得する機会を持つ者と持たざる者との比較)と言います。
総務省が毎年取り組まれている調査からも、まず高い年齢ほどパソコン使用率やインターネット利用率は低い傾向にあります。自治体の実態調査では、より明確により顕著にデジタルディバイドの問題が進行している層が表れてきました。ここでは表等を掲載することはできませんが、以下の内容が課題として浮き彫りになってきました。
1.年齢の高い人々 2.「障害」がある人 3.女性 4.低学歴者 5.低所得者
こういった人々にデジタルディバイドが進行しています。十数年前から急速に普及してきたインターネットに高齢者が対応しにくい状況があり、低所得者層におかれた人々はパソコンを購入すること、月々のインターネット使用料を支払うことが不可能であり、また、安価で使用できるなどの具体的な情報を収集できる技術がなかったりするなどです。
例えば、携帯電話一つ購入する際にも、そして契約する際にもさまざまなサービスプランが利用できます。しかし、そのサービスを知り、そのサービスを使いこなすことができ、また理解できる力がなければ、そうでない人と同じ携帯電話を購入したとしても、情報理解能力があり、サービスを縦横無尽に活用できる人のほうが圧倒的に安価で契約でき、月々の使用料金も同様になるということです。
パソコンを購入でき、インターネットに接続でき、インターネットを使いこなせる人と、そうでない人との情報収集の量は圧倒的に違います。戦後最大の不況と言われる時代であるからこそ、より多くの情報を集め、危機的状況に対して、自分はどのような施策やサービスを利用できるのかというのは重要であると考えています。そして海外などから情報を得ることで、危機的状況の打開策なども見いだすことができると思います。
しかし、それには経済的にパソコンを購入でき、月々の使用料金も支払え、インターネットを使いこなすことができなければ不可能です。
なにもデジタルディバイドはインターネットに限りません。2011年7月25日からはじまる「デジタルテレビ放送」も現段階の検討策のなかでは、さらなる情報格差による経済格差が生じると思っています。現在、やっとの思いでアナログテレビを購入された世帯でも、2011年7月24日までには、デジタルチューナーなどを取り付けないと視聴できなくなります。そのチューナー購入代金を消費者負担にするのか否かで、特に低所得者については、情報収集手段を奪われかねないとまで感じています。
差別的書き込みや人権侵害に関しては、「迅速に対応ができるか否か」がかかってきます。グーグルマップで生じた問題を見ればわかりますが、インターネット上で生じた問題は迅速に対応しなければ、被害は拡大し続けてしまいます。個人情報が漏洩したことについても、いかに早期発見ができるか、いかに迅速に削除依頼ができるかどうかで被害を最小限で押さえることができますが、そこにはインターネット接続機器を持っているか否か、そのサイトにアクセスすることができ、削除依頼などの手続きを行える技術があるか否かは極めて重要であると思います。
「匿名掲示板」で差別的な書き込みをしている人のすべてが経済的に豊かだとは思いませんし、立証もできません。現代語で言う「ネットカフェ難民」となって、インターネットカフェから発信している可能性もあります。
しかし、利用者のなかには保護者などからパソコンを買ってもらったという人もいるでしょう。成人を超えても使用料を保護者が支払っている家庭もあります。
実際に誹謗中傷を行っていた子どもたちはいます。経済的に家庭は豊かです。そうでなければパソコンを購入してもらえるなどできません。
ところが、経済的に豊かであっても心が貧しくなっていることがあります。市民のすべてを経済的に豊かにするような施策を国が行ったとしても、差別的書き込みや人権侵害等は解決されないと私は考えています。子どももおとなも含めて心を貧しくさせられてきた人々をエンパワメントできる支援が必要だと思います。
かなり話しが飛躍しましたが、インターネットの人権問題ではこういった視点での取り組みも必要であると考えています。4年弱取り組んできましたが、「自覚なき被害者」が多いことが、かなり引っかかっていました。被差別の立場に置かれた人々であれば、さらにです。すべてではありませんが、経済的に厳しい世帯が集中しているなかで、差別的な書き込みの対象とされていることすら知らない現実があります。
厳しい生活を余儀なくされているのに、安価なプランやサービスを活用できていない市民の方々もおられます。この高度情報化社会に、そういった厳しい生活を余儀なくされている人々が置き去りにされようとしています。
インターネットを含めたデジタルディバイド問題は、私たちに社会のあり方について問題提起をしてくれています。