反差別・人権研究所みえ|HOME > トピックス
組織
更新情報一覧
個人情報保護規定
所在地など
入会のご案内
お問い合わせ
インターネットから見える社会矛盾と人権
〜 インターネットから見える社会矛盾と人権 〜 (第15部)

携帯電話端末専用サイト等への取り組み 総括

1)取り組みから見えてきたこと
 昨年度と今年度、モニターをしてきたなかで発見できた悪質な書き込みの件数については、初の減少となった。しかし、私が把握し、限られた時間のなかでモニターできたサイトという限定的なものであり、実質、外部からの相談は相変わらず増加し続けている。
来年度、多忙ななかで相談内容を具体的にまとめられるよう、講演活動を縮小しようと考えている。相談は具体的で今日的な内容を把握することができ、実態把握や削除のスキルアップ、県や市町などの関係者への政策提言へもつなげることができる貴重なものである。

 今年度の目立った傾向として、4年間モニターしてきた携帯電話端末専用掲示板において、20件近くもの「援助交際」に関する書き込みがあった。これは昨年、一昨年にはなかったことであり、考えられることとして、出会い系サイトの規制が強化されたこと、フィルタリングの影響を受けたこと、掲示板利用者が年々入れ替わっていることなどである。

 講演でも話しをしているが、子どもたちにとっての「公式」サイト上における中傷などの書き込みは、私が見てきた限り、減少している。しかし、流れとして少数でHPを立ち上げ、ブログ、プロフ、掲示板、写メを定期的に更新し、ブログやBBSのなかで特定個人をあだ名で中傷する事例も少しずつであるが、相談からではじめている。

 気になるのは、モバゲーやGREE、MIXIといった「SNS」サイトで、県内の子どもたちがどのような利用をしているのかについて、この第3者が把握できないサイトでの利用内容である。基本的にミクシーは18歳未満禁止となっているが、すでに高校生からはよく利用しているという話しを聞いている。

 モバゲーに関しては、管理者が適正利用を促すための管理を行っているが、すべてを網羅できるものではない。昨年度、一昨年度、その前にもあれほど、強烈な書き込みを行っていた子どもたちが、悪質な書き込みなどをピタッとやめたとはどうしても考えにくく、その利用状況から、「子どもに対しても非公式」なサイトが増加してきているため、実態把握すら難しくなってきた。

 これらの状況から、子どもたちに対しては、より感性に訴える教育手法が求められる。表面的にはよい子を演じていても、ネット上では現実世界での姿とは想像もつかない書き込みをしている。子どもたちの実態を綿密に具体的に把握することが求められ、教職員は「学校で現れている子どもの姿」のみを頼りにしてはならず、保護者は「家庭で現れている子どもの姿」を100%と容易に判断してはいけないように思う。

 「この子は数学ができる」「この子はサッカーが上手」「この子はよく気がきく」、これらは「見た目」でわかるものであり、第3者であっても数日間、子どもたちを過ごせば、すぐに見えてくる「子どもの姿」である。こういった安易な子どもの姿を見つめる方法ではなく、学校や家庭が本当の意味で、それぞれの環境下の子どもの姿を共有し合い、また子どもについては、内面を自ら発信できる関係性を築いていかなければならない。それが備わっていない子どもたちが日常的な不平・不満・不安をインターネット上に他者を中傷することにもつながっているように私は感じている。

 「なぜ、子どもたちはこういった書き込みをするのか」という表現されてきた書き込みから、原因の究明・探求の作業が必要であり、就学前から保護者・子どもが一体となって、自尊感情を高めるための取り組みをはじめ、一人ひとりの子どもたちに保護者のみならず、教師や地域の人々が身近におり、子どもたちが大切にされていることを実感できる関係づくりや環境づくりが今日的課題である。

2)今年度の主な取り組み
@三重県警察本部サイバー犯罪対策室との情報共有・連携
A三重大学工学研究科の教授及び学生に実態把握の円滑化について研究の依頼
B講演活動による行政、教育関係者、青少年健全育成団体、PTA等への啓発
C県内外各種組織への事業立案の協力
Dインターネット差別的掲示板等モニター人材の育成
E各組織の横の連携を図るための仲介
F県内外の団体・個人・自治体との連携
G高校・大学での授業・講義
H小・中・高校生対象のインターネット上の問題に関する講演
I自治体及び各種団体発行のパンフレット・リーフレット原稿の提供
J情報化社会と人権研究会による研究会の実施
K県内外における年間300件以上の相談への対応
L研究所ホームページによる啓発活動
Mマスコミ・ジャーナリストとの連携

3)成果
今年度の取り組みについて、大まかな取り組みは、
@県内外への講演による知識の普及・啓発・教育を約120回
A昨年度以上に県内市町に対し、独自の取り組みの強化の推進
があげられる。

 他に、今年度はHPを利用した啓発活動に取り組んだ。講演用資料には、研究所HPのURLを掲載し、HPの閲覧をお願いした。ネット利用における悪質書き込みの行為者に対し、「書き込みをすること、そこに時間と労力を費やすことの無意味さやデメリット」への気づきをテーマに、14部にわたって掲載を続けた。

 また、三重県教育委員会発行の「わたしかがやく改訂版」への情報提供、松阪市人権施策基本方針改定にかかる意見、市民団体におけるネットと人権に関する冊子への情報提供、8月5日から導入された「ストリートビュー」に対する取り組みがある。
 「学校裏サイト」に関する問題が県内でも多発しているなかで、教育委員会人権・同和教育室が、県内の小・中・高において、インターネットの適正利用の教育や人権意識の高揚を目的とした冊子を改訂するということから、これまで研究所で取り扱ってきた相談事例などを基に、より具体的な内容を掲載することで、教育内容も変化・発展していくことへの一助をした。

 他にも、3月13日には、「インターネット上で生じるあらゆる問題を考える研究会」を立ち上げ、県内関係者に任意として、案内文を出したところ、三重県警、三重大学、三重県(生活・文化部、三重県人権センター、健康福祉部、教育委員会人権・同和室、生徒指導・健康教育室)、伊賀市、伊賀市教育委員会、桑名市、桑名市教育委員会、鈴鹿市、名張市教育委員会、津市、津市教育委員会、四日市市教育委員会、志摩市、尾鷲市教育委員会で34名が集まり、研究所が把握できていないさまざまな問題や取り組みなどを全参加者が資料とともに共有することができた。

 また、三重大学の教授と学生については、今年度、県内企業の紹介を受け、携帯電話上で生じる悪質な書き込みのモニターの円滑化について、研究をしていただき、当日、非常に短い時間で申し訳なかったが、研究成果について発表いただいた。モニターに係る時間や労力を短縮化するために、全国的にも類を見ない視点からの研究をいただき、当日の発表では誰もがその研究に驚かされた。引き続き、多くの支援をいただき、県内の各機関に三重大学の研究が広まればと考えている。

 さらに、三重県警からは来年度からはじまる事業のモニターボランティアの事前募集も行われ、三重県内におけるサイバー犯罪への取締強化へ向けての提案もなされた。
 会終了後は、それぞれの参加者が名刺交換を行い、取り組みの共有とともに今後のつながり強化にもなった。来年度は、今年度の会議では発表や協議しきれていない内容が山積しているため、3回程度開催する予定。以後、本研究会としても何らかの取り組みができればと考えている。

 少しずつではあるが、取り組みの広がりが見えてきている。研究所としては、モニターシステムが委託によって確立されているため、来年度も同様、より具体的な内容を把握し、研究会において発表したり、また最新情報をこれまでマスコミやジャーナリストとつくってきたつながりを活かし、県内関係者へ情報提供したり、また取り組みの提案を積極的に行っていくなど、今年度以上の取り組みを広げていきたい。

 4)課題
  昨年度に引き続き、相談件数(啓発相談から侵害事例の相談等)は400件以上になるが、電話や携帯電話、メールなどでの相談というかたちでバラバラであり、職員数が少ないなかでの相談の増加が事例への対応ができない状況となり、具体的な相談内容をまとめることができず、今年度は話しを聞いているだけで取り組めないという課題が残り、相談者への信頼を低下させてしまった事例が数件あった。取り組みたいという思いとは逆に多忙化する業務の負担によって信頼を失墜させてしまうことに憤りを感じる。

 悪質な書き込みが行われている掲示板等への対処に関する相談についてはすべて対応し、管理者やプロバイダへの削除依頼等をメールや文書で、できる限り行った。相談業務が位置づいていないが、研究所への相談が急増し対応に追われている。

 昨年度と同様、事務局の業務もあるため、かなり無理をして講演を受けてきたが、300件ほどの講演を断わらざるを得なかった。依頼件数も年々増加している。

 伊賀市教育委員会と類似するような取り組みが迅速に立ち上がっていかない。ネット上の問題だけに限らないが、悪質な書き込みについては早期発見・早期対応が求められるが、市町の財政悪化も影響し、行政が実態を把握する取り組みがすぐには位置付いていかない。

5)最後に
 年々活動するなかで、多くの方々との連携・連帯が広がりを見せていくことについて、悪質な事象は相変わらずの実態であるが、取り組もうとする方々が目に見えて増加していくことに、大いに展望を感じる。
 人権関係団体、当事者団体、行政、教職員、企業、県内外の大学、法律家、マスコミ関係者、ジャーナリスト、市民など、来年度に向けてもさらに反差別の輪を広げ、大きなネットワークの構築に努めたい。

HOME調査・研究出版講座受託情報組織企画会員 個人情報保護規定  お問い合わせ